パン屋を開業する前に知っておくべきこと・考えておくべきこと
目次
<パン屋を開業する前に知っておくべきこと・考えておくべきこと>
パン屋を開業する前には様々な準備が必要不可欠です。
スムーズに営業を行っていくためには、店舗のコンセプト、メニュー、
資金から休日設定まで具体的に考えておくべきことが多くあります。
自分のスタイルで店舗を開業するために必要なことを知っておきましょう。
パン屋を開業して生活していくことに憧れを持っている人はいると思います。
しかし、実際に開業し成功できる人間は限られています。
失敗しないためには、事前の準備を入念に行っておくことが重要です。
店舗のコンセプトや資金など、開業する前段階から計画的に準備を行うことで、
息の長いパン屋を経営していくことができます。
そのために必要な知識やノウハウについて記載していきますので、参考になさってください。
①パン屋開業前にしっかりとコンセプトやメニューを考える
パン屋を開業する前にしっかり考えておくべきことは、店のコンセプトです。
店舗を開き、どのように営業していくかは、その店の土台となる部分です。
パン屋の中にも、手作りのパンを製造し販売する店舗と、
仕入れたパンを販売する店舗があります。
また、菓子パンを製造して販売するのか調理パンを販売していくのか、
テイクアウトのみかイートインできる店舗にするのかなど、コンセプトは様々です。
また、販売するパンの種類を明確にしておくことも、
店舗コンセプトの決定をスムーズに行うためには重要になります。
事前にしっかりコンセプトを決めておかなければ、自身の思い描いた営業を行うことはできません。
コンセプトを決めることができれば、メニューや商品構成を順次決めていくことができます。
どういったパンに力を入れるかによっても、その店舗の印象が大きく変わるため、
メニュー決めも重要な部分となります。
トレンドや自分のコンセプトに近い店舗をリサーチし、
流行を取り込みつつも、自身の行いたいことをしっかり決めていくことが
長く経営していく上では大切な要素となってきます。
②パン屋開業に必要な資金の準備
パン屋を開業するにあたって、必要となる費用はトータルでは数百万~1000万円
程度は掛かる場合もあります。第一に、店舗経営するために必要不可欠な物件に掛かる費用です。
物件により大きく異なりますが、敷金や礼金などを考えると最低でも50万円、
多ければ200万円から300万円かかる場合もあります。
また、コンセプトに合わせて店舗の内装や外装を工事・改装する必要も出てくると思いますので、
そのための費用も考えておきましょう。
内装、外装工事も、居抜き等でない場合は300万円程掛かることも多いため、
しっかりと予算を決めておくことが重要となってきます。
また、店舗を経営する立地選びも重要になってきます。
需要のある場所かどうか、人通りはどうかなどリサーチしておきましょう。
立地条件によっては物件に掛かる費用も大きくなる場合もあるため、
色々な土地の不動産相場価格や賃料相場などの調査も行っておきましょう。
自宅を改装して経営を行う場合もありますが、専用の厨房器具を設置することを考えると、
いずれにしても内装の工事は必要になってきます。
専用の厨房器具を揃えるためには、ある程度の費用が掛かると考えておきましょう。
パンの種類によっても揃える器具は異なり、製造するパンの種類が多ければ多い程、
器具の数を揃えなければいけません。
そのため、店舗で扱う商品が多くなればなるほど、器具に掛かる費用が多くなるということを
念頭に入れておく必要があります。
最初にパンの種類をある程度決めること、それに使用する器具を明確にしておくことも重要です。
また、パン屋を実際に経営する際に掛かる運転資金や経費についても、
事前に考えておかなければなりません。
最初に掛かる資金だけ揃えても、経営していく上では月々の光熱費や人を雇う場合は従業員への給料など、
多くの経費が別途掛かります。
特にオープンしたての店舗は知名度も低いため、最初の内は上手く集客出来ないことも多く、
収入も少ないことがほとんどです。そのため、開業前には余裕を持った資金を準備しておくようにしましょう。
開業まで入念に計画を立てていても、予期せぬ事態は起こる可能性は十分考えられます。
そのような事態、または開業したてで収入が少ない場合も、
その余裕を持って用意した資金でやり繰りできるように、100万円程準備しておくと安心できます。
また、開業に掛かる費用を抑えることも重要です。
物件を選択する際に、居抜き物件を選択することで費用を大幅に削減することができます。
元々パン屋であった居抜き物件であれば、内装や厨房器具、業務用品などそのまま使用することも可能です。
内装の大幅な改装や厨房器具を一から購入しなくても済むため、工事費や購入費を大幅に抑えることが出来ます。
居抜き物件の選択以外に厨房器具の費用を抑えるためには、
新品ではなく中古品を購入することも一つの手段として考えるのもよいでしょう。
中古の厨房器具でも新品と性能が変わらないものもあります。
また、広告・宣伝のためにDMなどを制作し、ポスティングなどを行う場合でも、
自分で出来るのであれば費用はかかりませんが、専門の業者に依頼すると費用がかかってしまいます。
広告などはインターネットで無料で行えるものなどもあるので、
うまく活用して広告に掛かる費用を節約することもできます。
このように費用を抑えることで、資金を圧迫せず余裕を持つことも出来ますし、
別の資金に回すことも可能となります。
これらに掛かる資金を、開業のために貯蓄をしてきた人であっても、
自己資金のみでこの額を用意することは中々難しいかもしれません。
もちろん上記でお伝えした節約方法などで費用の削減をすることは大切ですが、
ほとんどの場合、開業をするための資金調達をする必要が出てきます。
家族や知人にお願いする場合もあると思いますし、民間や国の管理する金融機関に
融資の相談を行う場合もあると思います。
その際、しっかりとした事業計画を立てておかないと、融資が受けられない可能性も出てきます。
また、月々の返済に関する計画も必要です。
売り上げの見込みよりも返済額が大きくなるようでは、経営が立ち行かなくなってしまいます。
飲食店の1年未満での閉店率は35%と言う調査結果もあります。
もちろん1年目は、売り上げの見通しを立てるのは難しいかもしれません。
だからこそ、ある程度の見通しを立てることで、生きの長い経営をすることが出来るようになるので、
融資や返済についてももちろんですが、全ての事柄についてしっかりと計画性を持っていくことを
心掛けるとよいでしょう。 もちろんリライブでは、居抜き物件や小規模物件等で上記よりも
低コストな開業を果たした卒業生も大勢います。
③コンセプトや資金に応じた店舗イメージを考える
店舗イメージは、コンセプトや資金によって変わってきます。
理想の外装や内装を考えていても、資金が足りなければ実現することは不可能です。
自身の用意できる資金や融資額などに合わせて、現実的に店舗イメージを考えていくことが重要です。
思い描くコンセプトを資金内で収まるように決めていくことで、店舗のイメージがより具体的になってきます。
具体的になっていけば、どんなものが備品として必要か明確になっていくので、
しっかりと準備を進めていくことができます。
出店する場所も、物件の価格相場などを資金と照らし合わせて選ぶようにしましょう。
例えば駅近くなど、利便性の高い場所は物件の価格も高くなる傾向にありますが、
利用する人も多くなるメリットもあります。その分、資金が多くかかる点や、
他の競合するパン屋も多く店舗を構えている可能性も高いため、競争率が上がる点にも注意が必要です。
逆に駅から離れた場所の場合、物件の価格は下がりますが、利用する人も少なくなる可能性もあります。
交通量の多い場所では、駐車場や駐輪場などのスペースも考慮しなければいけないかもしれません。
④開業時間や休業日について考える
パン屋を経営する際に、開業時間と休業日は集客に大きく関わってくる部分になります。
店舗を構える場所によって、人が多く集まる時間は異なります。
そのため、それに応じて営業時間を考えることは、
店舗の集客率や売り上げを左右する問題にも直接繋がってきます。
駅前に店舗を構える場合、平日の通学、通勤時に合わせた開業時間にしておくことで、
学生やサラリーマンに利用してもらいやすくなり、上手く集客を行うことができるようになります。
その場合、休業日は学生やサラリーマンの休みに合わせて土曜日と日曜日に設定しておくと、
無駄な経費を抑えることもでき、上手く店舗を営業することができます。
駅前ではなく郊外に店舗を構える場合は、主婦層に利用してもらいやすい昼間の時間を
メインに営業すると良いでしょう。その場合、イートイン形式や駐車場を設けておくと、
リピーターが増えやすくなる傾向にあります。
その他にも、その土地や立地ならではの条件などもあるため、事前に人の集まる流れや時間を
可能な限りすべての曜日問わず調査をして、開業時間と休業日を決めていきましょう。
⑤パン屋開業に必要な手続き・資格
パン屋を開業するまでに、必要となる手続きは多くあります。
まずは保健所への「営業許可申請」の手続きを行う必要があります。
店舗の場所や大まかなレイアウトが決まった時に保健所へ事前相談を行い、
工事完了までに書類提出する必要があります。
店舗が完成後には検査が行われ、条件がクリアされれば、営業の許可が下ります。
また、「食品衛生責任者資格」もパン屋や飲食店を開業する上で必要不可欠となる資格です。
店舗の衛生管理と教育を目的としている資格で、食べ物を扱う店舗には必要不可欠な資格と
なりますので、取得の際は学校に相談してください。
まずは、食パンや菓子パンの製造と販売を行う場合には「菓子製造許可」が必要となります。
デニッシュパンやフルーツの乗っている菓子パンだけでなく、クリームやあんこが中に
入っているようなパンも菓子パンとなるため菓子製造業という区分になります。
パン生地を仕入れ、焼き上げるのみの店舗でもこの菓子製造許可が必要です。
また、テイクアウトだけでなくイートインできる店舗やサンドイッチ等の調理パンを製造販売する場合は、
「飲食店営業許可」も従来の「菓子製造業許可」に加え必要になります。
ちょっとしたカフェスペースを設けるだけでも、飲食店や喫茶店と判断される場合
もあるため、申請は必ず必要です。
このように店舗の形態や販売するパンの種類によって行うべき手続きは異なってきます。
知らなかったでは済まない話にもなってくるため、事前にしっかりと自身のコンセプトに
必要な許可や資格を調べておくようにしましょう。
また、個人業の場合は「開業届」を提出して、確定申告を行うことも必要となってきます。
保健所からの許可が下りた後に開業届を税務署に提出する流れになり、
この際に確定申告の青色申告承認申請書も合わせて提出できるようにしておくようにしましょう。
開業の際に大きな資金が必要な場合もあり、日々の営業を効率的に運営していくためにも
節税効果の高い青色申告はメリットになるため、しっかり申告しておくことが
個人業のパン屋を経営するためには重要になってきます。
⑥パン屋開業前後で考えるべき広告宣伝方法
パン屋を開業する際に、顧客を獲得するために重要な宣伝方法を考える必要があります。
店舗の宣伝として昔からある、チラシを配布するという方法は、
近隣住民への宣伝として大きな効果が期待できます。
しかし、チラシを製造するにもコストがかかり、配布する際の労働にも時間を割くことになります。
チラシのポスティング依頼も広告を掲載するにも意外にコストが掛かる場合があります。
費用対効果をしっかりと意識して取り組むことが必要です。
また、インターネットを使用した宣伝方法は無料で使用できるものも多く、
コスト低コストのものから選択できるのは大きなメリットとなります。
近年ではスマートフォンの普及でSNSも多く発展しているため、
パソコンの知識がなくとも簡単に宣伝ができるようになりました。
SNSは多くの人に気兼ねなく見てもらえるため、宣伝手法としてはメリットが大きい面もあります。
しかし、情報発信者が多いと流れてくる情報の量が膨大で、
常に受け取る側は取捨選択をしながら情報を取得しています。
そのため、余程工夫をしなければ、人の目に留まることは少なくなってしまうのが現状です。
また、店舗を構えているその地域の人に的確に情報を見てもらうことも容易なことではありません。
手軽にできる分、情報を本当に必要とする人に届けるにはメリットばかりではないという点に注意しましょう。
より宣伝効果を得るために、アカウントさえ持っていれば無料で使用できる
Googleマイビジネス等を活用することも可能です。
利用することで関連のキーワードで検索した際に、検索結果や地図アプリ上に
店舗の詳しい位置や情報が開示されるようになります。
近年では店舗探しはGPSを使用し、自分の今いる場所周辺の店舗を検索することも多くなっています。
そのため、店舗の存在を把握し利用してもらうには効率の良いサービスとなる場合もあります。
ホームページ作成やSNS運営が苦手な場合でも、簡単に情報と写真を掲載することが可能です。
店舗の営業時間、外装や内装の写真、メニューの詳細や力を入れている商品など、
多くの情報を分かりやすく検索結果やマップ上に掲載してもらえます。
また、口コミも同じ掲載先に表示されるので、一度に多くの情報をこれから利用する
お客様に向けて発信することができます。
口コミの管理や返信も容易に行え、店舗の情報を閲覧した数、閲覧している地域などの分析も可能です。
宣伝だけでなく、実際にどのような人に利用してもらっているか、
口コミに返信することで店舗の印象も良くする事ができ、
分析を行うことで、店舗の展開方法も見直していくこともできます。
情報だけでなく簡単なWebサイトもテキストを変更するだけで作ることができるため
、インターネット関連に弱くても制作できることが大きなメリットとなります。
デメリットとしては、利用ユーザーがGoogleの検索機能を使用して検索しなければ
情報が表示されないという部分にあります。他の検索結果では表示されないので注意が必要です。
これらの様々な広告宣伝やPR等の手法を検討し、複数の手法を選択し、
そして、組み合わせて活用することが必要です。
どの手法もメリット部分があれば、デメリットもあり、一つの手法だけではそれらを補うことは難しくなります。
複数の手法を使用することで自店をより多くの人に知ってもらうことができるようになります。
開業直後やPRの内容によってコストや時間のかからない方法、
そして有料のチラシや広告による宣伝などを検討し、取り入れていくことで、
効果的な販促活動を実施していくことが必要です。
⑦パン屋開業後に売上を出すために留意すべきこと
コンセプトや開業場所などしっかりと考え、宣伝もちゃんとおこない開業する。
それでも失敗をしないとは言い切れません。
パン屋を開業し、経営が継続していくにはとにかく売上が必要となります。
売上を出していくには開業場所が重要となりますが、それ以外にも考えるべきことは多くあります。
商品開発をおこなう際にも考えておきたいのが商品単価です。
開業するにあたり、家賃や設備費用、光熱費、人を雇うのであれば人件費等々、
必要経費は最初に想定していた以上にかかってしまうことがままあります。
その経費を回収してしっかりと利益を出せるような値段設定をおこなうことは、
店舗経営をするために必須となります。
とはいえすべてのパンを高単価で販売する、というのは現実的ではありません。
美味しいパンを求め、しっかりとお金を払うパン好きの方もいらっしゃいますが、
その一方コンビニで販売されている100円台のパンで満足される方が多いのも事実です。
お客様が手に取りやすい価格の商品を用意しておくことも重要です。
そのため戦略の一つとして、扱う商品の中の一部を高価格商品にする、という考え方があります
例えば、一斤の食パン、または一本のフランスパンなどは見た目にも高級感があり、
しっかりとした値段でも購入されていくお客様はいらっしゃいます(
もちろん、開業場所のお客様の傾向によりますが)。
また、季節限定・シーズンイベントに合わせた素敵な商品なども、
少し高い単価でも売りやすいものです。
お客様も季節限定の商品やイベントに関連した商品であれば
気分が高揚してついついご購入されるケースもあります。
季節やイベントごとに商品開発をおこなうのは大変ですが、
独創性のあるパンを作って売上を出すことがブーランジェとしての
働き甲斐であると考えて頂ければと思っています。
売上を出し続けるには、開業後も積極的に新規顧客を
増やすよう意識がける必要があります。
素敵なパン屋は人から人へとその評判が広がっていくものです。
しかしそれでも、実際にお店の扉をくぐるには心理的なハードルがある、
という方も少なくありません。
その見込み客の背中を押すには、やはり宣伝をおこなうことが大切です。
広告宣伝は開業前におこなっていたとしても、
開業後にあらためておこなうことで効果を生み出します。
チラシを撒く、街に広告を掲載するという手も考えられるべきものですが、
昨今で効果的なのはWEBを活用した集客方法。
特に、FacebookやInstagramといったSNSは更新もしやすく重要です。
前述した季節限定・シーズンイベントに合わせた商品などを
SNSで紹介することで簡単に広告宣伝をおこなうことができます。
気になっているお店だけれど中に入る勇気がない……
という見込み客がもしSNSでお店のことを調べ、
素敵なパンの写真を見つけることで足を運ばれるきっかけとなることもあるでしょう。
SNSは必須ではありませんが、新規顧客を増やすための有効なツールで
あることは是非知っておいてもらいたいです。
<まとめ>
パン屋の開業には多くの手続きが必要になってきます。
パン屋の業態や取り扱い商品によってだけでもそれぞれに必要となる許可も異なるため、
事前に自分の店舗ではどのようなパンを販売するのかについてもしっかりと考える必要性があります。
パン屋は難しい資格がなくても開業することができますが、
自店の特徴やコンセプトを表すために必要なスキルや知識を身に着けておくことが必要です。
冷凍生地や冷凍食品等を活用して、個人店を運営していくだけでは、
チェーン店との差別化が出来ず、地域に根差し、永く店舗を継続していくことが出来ない可能性も高くなります。
また、広告宣伝や各種PR手法もしっかりと取り入れることにより、
より早期の経営の安定を目指すことも大切な要素となります。
宣伝方法のメリット、デメリットを把握し、自分にあった宣伝方法を使用して店舗の知名度を上げていきましょう。