カフェ・喫茶店にコンセプトは重要?作り方の手順や事例をご紹介
目次
カフェや喫茶店を開業する際、準備すべき項目の中に必ず含まれているのが「コンセプト作り」です。
すでに飽和状態にある業界で営業を続けるには、「コンセプトが必須」と多くの専門家が主張しています。
そこで本記事では、コンセプトの重要性を踏まえたうえで作り方の手順や考え方、具体的な事例をご紹介します。
カフェ・喫茶店におけるコンセプトとは?
カフェや喫茶店の開業を支援するスクールおよびフランチャイズなどの講習会では、必ずと言って良いほど「事前にお店のコンセプトを設定しましょう」と指導されます。
カフェ・喫茶店のコンセプトとは、「お店の基本方針や方向性、特徴」を指しており、長期にわたって営業を続けていくための必須要素です。
「カフェのコンセプト=お店のカラー」と言った方がイメージしやすいかもしれません。
コンセプトは個人経営のカフェ・喫茶店にこそ必要!
日本におけるカフェの閉店率は、開業2年で50%とも言われています。
特に個人経営のカフェや喫茶店は、下記のような弱点から大手チェーン店よりも苦戦しているのが実情です。
▼個人経営のカフェ・喫茶店の弱点
- 資金力が脆弱
- ネームバリューがないため、初来店の集客率が低い
- 広告宣伝のノウハウなど、マーケティング戦略の知識が乏しい
これらの弱点をカバーしてくれるのが、開業前に考案するコンセプト作り。
開業前にしっかりとしたコンセプトを設定しているカフェや喫茶店は、飲食店に欠かせない「話題性」が強みとなり、長・短期的に集客に繋がるのです。
中でも下記のようなカフェオーナーにとっては、コンセプト作りが経営の命綱になります。
▼コンセプト作りが欠かせない人
- 少ない資金力で初来店のお客様を効果的に集客したい人
- 費用対効果が高く、持続性に優れたマーケティング戦略が必要な人
▼参考コラム
カフェ・喫茶店を個人経営で開業する方法4つ!収入の目安や成功の秘訣は?
脱サラ後のカフェ開業で失敗する原因7つ!成功者はここまで準備している
カフェ・喫茶店にコンセプトが重要な理由3つ
取り立てて特徴がなく、平凡なカフェや喫茶店だからと言って必ずしも短期で失敗する訳ではありません。
そのため、「コンセプトは必要ないのでは?」「コンセプトより味にこだわるべきでは?」と思われている方も多いようです。
にもかかわらず、なぜ専門家や現役オーナーの多くがカフェや喫茶店にとって開業前のコンセプト設定が必須だと主張しているのでしょうか?
その理由は、コンセプト作りによって得られるメリットが「集客」と「経営」の両面にとって大きな強みになるからです。
この段落では、カフェ・喫茶店のコンセプト作りが重要視される3つの理由について解説します。
▼カフェ・喫茶店にコンセプトが重要な理由
- ライバル店と差別化ができる
- 来店動機が強まりリピーター増える
- 事業計画が立てやすい
ライバル店と差別化ができる!
カフェや喫茶店を開業する際は、人通りの多さやターゲット層に合わせたエリアを厳選します。
しかし、立地条件が良いエリアほど似たようなスタイルの競合店が多いのはもちろん、集客しやすい一等地は資金力のある大手チェーン店が占めているケースがほとんどです。
最近ではコンビニでも手軽に本格的なコーヒーが手に入るほど、カフェを含む飲食店は飽和状態になっています。
そこで重要となるのが、ライバル店と差別化ができるコンセプト作り!
他店にはないオリジナリティをプラスすることで話題性が生れ、自店ならではのカラーがお客様を引き寄せる強みになるのです。
▼コンセプトの一例
- 物販の併設:雑貨、インテリア、フラワーショップ、ベーカリーなど
- ペット系:ドックカフェ、猫カフェなど
- 体験型:プラネタリウム、映画上映、ブックカフェなど
- 空間重視:オープンカフェ、屋上カフェ
来店動機が強まりリピーター増える!
飽和状態にある業界で2年以上経営が続いているカフェ・喫茶店は、「お客様に来店動機を提供している」という共通点があります。
ポイントは、お客様に「このカフェに行けば○○が楽しめる」「○○を食べるならこのカフェが一番」と思ってもらえるかどうか。
ボリューミーなハンバーガーセットを名物メニューにした米国風ダイニングカフェ、サーファーショップを併設したハワイアンカフェなど、コンセプト次第でお店の雰囲気はガラリと変わります。
つまり、コンセプト作りはお客様に「このカフェに入ってみようかな?」という来店動機を与えるだけでなく、固定客となるリピーターを増やす効果もあるのです。
事業計画が立てやすい!
10年以上にわたって経営が持続している個人カフェの多くは、オープン当初から店内の雰囲気やメニューがコンセプトに沿っており、繰り返し来店してくれるファン層を獲得しています。
言い換えれば、開業前に明確なコンセプトが決まっているだけで、事業計画に欠かせない内装・外装・メニュー・看板デザイン・接客スタイル・営業時間の全てがイメージしやすくなり、必要経費の算出も容易になるのです。
一方、コンセプトを設けずにカフェや喫茶店をオープンするのは、ゴールを定めずにマラソンを走るようなモノ。
ターゲットとなるペルソナが定まらない、店内の雰囲気とメニューに統一性がないなど事業計画を立てる段階で躓きやすい分、ありきたりなカフェになりがちです。
金融機関で資金調達を申し込む時や地域の助成金を申請する際にも、コンセプトを明確にしておいた方が有利になります。
▼参考コラム
カフェの事業計画書で融資担当がチェックしているポイントは?全17項目を解説
カフェ・喫茶店の開業資金はいくら?3タイプの開店資金が一目で分かる一覧表
カフェ・喫茶店のコンセプトを決める方法と手順
カフェ・喫茶店のコンセプトを大きく分類すると、メインとなる「コアコンセプト」と要点を絞った「サブコンセプト」の2種類に分けられます。
とは言え、初めてカフェや喫茶店のコンセプト作りを行う場合は、何から始めるべきか迷う方も多いでしょう。
そこでおすすめしたいのが、よりスコンセプト作りがスムーズに進む「1S5W2H法」という基準です。
分類 |
1S5W2H |
詳細 |
---|---|---|
コアコンセプト |
Style(型・構想) |
店舗イメージ |
サブコンセプト |
Who(誰に) |
ターゲット(顧客)設定 |
Why(なぜ) |
お客様の来店動機 |
|
Where(どこで) |
出店立地 |
|
What(何を) |
どんなメニューを提供するか |
|
When(いつ) |
営業時間 |
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How(どのように) |
売り方・経営スタイル |
|
How much(いくらで) |
価格設定 |
ここからは、カフェ・喫茶店のコンセプト作りを上記の8種類に分けて、手順に沿って解説していきます。
なお、当リライブフードアカデミーではカフェの運営スキルだけでなく、開業準備からオープン後の経営戦略までをトータルで受講できるコースを設けております。
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①Style(型・構想):店舗イメージ
コンセプト作りのファーストステップは、「カフェの価値」を決定づける基本スタイルです。
カフェのメインコンテンツとは、「終始一貫させる構想」を指しています。
お店の特徴をお客様に分かりやすく伝える役割を担っており、下記の2点を満たしているのが理想的です。
▼メインコンセプトのポイント
- 他店との差別化が明確か?
- お客様の来店動機を引き出せるか?
下記の通り、カフェに別の要素をプラスするスタイルが主流になっていますが、南国リゾートやアメリカンスタイルなど海外旅行気分が満喫できる空間づくりも、メインコンテンツとして有効です。
▼メインコンテンツの一例
- カフェ+プラネタリウム
- カフェ+ギャラリー
- カフェ+映画
- カフェ+スポーツ観戦
- カフェ+和風の甘味処
- カフェ+本
- カフェ+フラワーショップ
- カフェ+ショットバー
②Who(誰に):ターゲット(顧客)設定
カフェのメインコンテンツが決定したら、マーケティング戦略の基本となるターゲット設定です。
「誰に向けてサービスを提供すべきか?」というよりは、「コンセプトを好む客層は?」と考えていくのがポイント。
▼ペルソナの一例
- 子供連れの主婦層
- テイクアウトを望む「サラリーマン層」
- ランチの機会が多い「20~30代のOL層」
- ポップな雰囲気を好む「学生層」
- ショッピングモールに来ている「カップル層」
- 健康志向の高い人
- ペット好きな人
家族や友人、職場の同僚など実在の人物像を思い浮かべながら考えていくと、よりターゲットが絞りやすくなり、自然とメニューや価格帯も想定しやすくなります。
③Why(なぜ):お客様の来店動機
3番目に考えるべきは「来店動機」、つまり「なぜお客様はこのカフェに立ち寄るのか」という視点です。
お客様がカフェに求めているニーズを突き止めるには、ターゲット層に沿って考えるのが基本。
なぜなら、来店動機はカフェのメインコンセプトだけでなく、ターゲット層によっても大きく異なるからです。
来店動機が多いほど集客率がアップするため、より多くのニーズを洗い出しておきましょう。
▼利用動機の一例
- 子供連れの主婦層:母親同士で会話を楽しむため
- テイクアウトを望む「サラリーマン層」:ランチや外勤の途中で、軽食を調達するため
- ランチの機会が多い「20~30代のOL層」:同僚とおしゃべりするため
- ポップな雰囲気を好む「学生層」:サークルの集まりや待ち合わせをするため
- ショッピングモールに来ている「カップル層」:デート中に立ち寄るため
- 健康志向の高い人:家庭では作れない本格的な健康食を楽しむため
- ペット好きな人:飼い主同士で交流を深めるため
④Where(どこで):出店立地
4番目に考えるべきは「出店立地」、いわゆるエリア選定です。
出店立地を選定する際、単純に人通りの多さだけで決めるのはおすすめできません。
むしろ、下記の2点を満たしているかどうかが決め手となります。
▼出店立地を決める際のポイント
- ターゲットがたくさんいるエリアか?
- メインコンセプトに必要な店舗面積、駐車場などが確保できるか?
⑤What(何を):どんなメニューを提供するか
5番目のメニューは、メインコンセプト・ターゲット層・来店動機・出店立地が8割ほど固まってから考えた方がスムーズに決まります。
▼メニューの一例
- 子供連れの主婦層:ハーフサイズの子供向けメニュー
- テイクアウトを望む「サラリーマン層」:サンドイッチやホットドックなど
- ランチの機会が多い「20~30代のOL層」:日替わりのワンプレートランチ
- ポップな雰囲気を好む「学生層」:男性向けならボリューム重視、女性向けなら季節限定メニュー
- ショッピングモールに来ている「カップル層」:女性が好むトレンドを重視した洋食など
- 健康志向の高い人:スムージーや天然酵母パン、薬膳ランチなど
- ペット好きな人:ペット用のスイーツなど
上記以外に、性別・年代を問わず好まれる「定番メニュー」と、このカフェでしか食べられない「看板メニュー」も用意しておきましょう。
▼参考コラム
カフェの定番メニュー!お客様を呼び込むメニューの作り方とは?
⑥When(いつ):営業時間
カフェの営業時間は、「エリアの特性」および「ターゲット層が利用する時間帯」から考えるのが基本です。
▼営業時間の一例
- オフィス街:モーニングの需要が高い早朝やランチタイム、就業後~夜にかけて
- 30~40代の主婦:幼稚園の帰りなど、子供連れで来店しやすい正午~夕方まで
- 休日:ブランチ客が増えるため、10時~などランチタイムの時間帯を広げる
日中は喫茶店として、夜間はカフェバーとしてコンセプトを使い分けてターゲット層を拡大するのも、効果的な集客方法です。
⑦How(どのように):売り方・経営スタイル
売り方や経営スタイルは、来店動機を元に考えるのが近道です。
お客様に満足して頂けるかどうかが勝負になるため、「どうすればターゲットが求めているニーズを充実させられるか」という視点で考えましょう。
▼売り方・経営スタイルの一例
- テイクアウト:効率的な注文・受け渡しシステムの導入
- ママ友の交友:キッズスペースの設置
- ドックカフェ:しつけ教室のイベント開催
- カフェ+雑貨の物販:販売用の食器でメニューを提供する
▼参考コラム
コーヒーショップの開業ガイド!黒字経営のコーヒー店に学ぶ成功の秘訣
⑧How much(いくらで):価格設定
結論から言うと、カフェで提供するメニューの適正価格は「原価率の20~25%が目安」です。
とはいえ、利益を重視すべきメニューもあれば赤字覚悟で価格設定を行うべきメニューもあります。
▼メニューと価格設定の関係
- 定番メニュー:適正価格内で、顧客満足度を確保すべきメニュー
- 看板メニュー:多少の赤字を出しても、他店との差別化を図るべきメニュー
- ドリンクやレジ横に並べるクッキーなど:利益率が高いため、儲けを重視すべきメニュー
肝心なのはバランス!利益率の高いドリンクなどで儲けを確保しつつ、集客や他店との差別化を目的とする看板メニューは利益が少ない分、数量を限定するなどの工夫が必要です。
コンセプト事例:ギャラリーカフェ
最後に、絵画やフォト作品を鑑賞できるギャラリーカフェのコンセプト事例をご紹介しましょう。
▼コアコンセプト:店舗イメージ
- 芸術に触れながら、ホッと一息つける空間を提供したい。
- 日々、忙しく働く社会人にランチタイムで安らいでもらいたい。
- お酒を飲みながら、のんびり芸術を鑑賞して欲しい
▼サブコンセプト:Who(誰に)
- サラリーマンやOL
- 街中で買い物をしている人
- デート中のカップル
▼サブコンセプト:Why(なぜ)
- 店内で、ゆっくりランチを楽しみたい
- 食事やドリンク以外のメリットも欲しい
- 食事をしながら芸術を鑑賞し、リフレッシュしたい
▼サブコンセプト:Where(どこで)
- オフィス街
- 商店街
- 中小企業の工場付近
▼サブコンセプト:What(何を)
- ランチタイム:日替わりメニュー/軽食/ドリンクのセットメニュー/スイーツ
- ディナー:看板メニュー/アルコール/簡単なおつまみなどのアラカルトメニュー
- 休日:パンケーキやバケットサンドイッチなどのブランチメニュー
▼サブコンセプト:When(いつ)
- 平日の営業時間:11:00~22:00(ラストオーダー21:30)
- 土日の営業時間:10:00~22:00(ラストオーダー21:30)
- 定休日:祝日・年末年始
▼サブコンセプト:How(どのように)
- 絵画やフォト作品など、芸術品の物販を併設する
- 新人アーティストの作品を集めてイベントを開く
- 作品が目立つよう、内装やインテリアを白で統一する
- 作品がダメージを負わないよう、手の込んだ調理は避ける
- カフェとカフェバーの切り替えスタイル
▼サブコンセプト:How much(いくらで)
- ランチの客単価:800円
- ディナーの客単価:1,500円
- ドリンクの単価(アルコール含む):300~800円
- スイーツの単価:250~800円
- アラカルトの単価:350~1,000円
ギャラリーカフェは、米国やヨーロッパでよく見られるコンセプトですが、日本ではまだまだ店舗数が少ないため高い話題性が期待できます。
地域のアーティスト数名を集めてコラボイベントを開くなど、工夫のし甲斐もありそうです。
まとめ
カフェや喫茶店が生き残るには、何よりコンスタントな集客が欠かせません。
しかし、資金力やネームバリューが乏しい個人経営のカフェオーナーにとっては、できるだけ費用を掛けずに集客したいモノ。
その点、話題性を産む優れたコンセプトは「費用対効果の高いマーケット戦略」の代わりになってくれるのです。
息の長いカフェ経営を持続させるために、必ず開業前にライバル店と差別化できるコンセプトを設定しておきましょう。