カフェの事業計画書で融資担当がチェックしているポイントは?全17項目を解説
目次
カフェ開業を目指している生徒さんから、よく「事業計画書の作り方が分からない!」という相談を受けます。そこで今回は、初めて事業計画書を作成する方の見本として、融資の審査で重視されるポイントと盛り込むべき項目についてご紹介しましょう。
なぜカフェ開業に事業計画書が必要なのか?
そもそも、カフェを開業する際に事業計画書は必要なのでしょうか?
答えは「YES」!事業計画書を作らずに開業したカフェは失敗する確率が高いのが実情です。
▼事業計画書が必要な理由
- 融資の審査に必須
- カフェのビジョンが明確になる
- ビジネスとして成り立つか、客観的に判断できる
たとえ自己資金が十分に有り、融資を受ける必要がなかったとしても事業計画書は欠かせません。
営業不振に陥った時、改善すべきポイントに気づかせてくれるのが、まさに事業計画書なのです。
カフェ開業の事業計画書に決まったテンプレートはない!
カフェの事業計画書に決まった書き方やテンプレート、ひな形となるフォーマットなどはありません。
エクセルやパワーポイントはもちろん、手書きで作成してもOKです。
ただし、関係者で情報を共有できるようにプリントアウトはしておくべきでしょう。
創業計画書の入手方法
融資を受ける場合は、各金融機関で指定されているフォーマットで創業計画書を提出しなければなりません。
多くの場合、公式Webサイトからダウンロードできるようになっています。
ちなみに、「日本政策金融公庫の創業計画書」は直接入力できるエクセルデータとPDFの2種類が用意されていますが、必要最低限の9項目のみとなっているため、別紙を添付して提出する方が多いようです。
融資担当者がカフェ開業の事業計画書で重視するポイント
カフェの事業計画書は融資の審査に欠かせない書類です。
ここでは、融資担当者が重視している事業計画書のポイントについてピックアップしてみました。
開業の動機・目的
融資担当者は、開業の動機・目的から「融資したお金を完済できる事業主か否か」を見極めようとしています。
具体的には、下記2点がアピールポイントです。
▼動機・目的の書き方ポイント
- 困難な状況でもカフェ経営を続けていける「強い熱意」:創業を決意したストーリー
- オーナーとしての「計画性」:開業へ向けて準備してきたこと
飲食業界での経験値・スキル
必ずしもカフェに勤務した経験である必要はありません。
飲食店全般で働いた経験・実績さえあれば、「カフェ経営に役立つ強みを持っている」と判断されやすくなるのです。
▼経験値と強み
- カフェのキッチンスタッフとして働き、エスプレッソマシンのメンテナンス方法を身に付けた
- 飲食店の新人研修を担当していたので、人材育成のノウハウを持っている
- 店舗マネージャーとして、人事から経理業務までの店舗舗運営を経験した
- 個人事業主のレストランに勤めていた経験から、コーヒー豆を個人で輸入する方法を覚えた
▼参考コラム
同等単価でのビジネス経験
カフェ経営は「薄利多売」に分類されるビジネスです。
車や不動産の売買といった高額商品を扱った経験値よりも、コーヒーと同じく単価利益が数百円の商品を扱った経験、売上をアップさせた具体的な実績などが強みになります。
資金調達計画
カフェ開業に必要な予算はいくらか、どのように資金を調達するのかが明確なほど、計画性が認められます。
まずは、「設備資金」と「運転資金」に分けて、具体的な内訳ごとに算出した金額を明記しましょう。
▼参考コラム
カフェ経営の事業内容
この段落では、成功しているカフェオーナーが事業計画書に盛り込んでいる項目を、見本として7つご紹介します。
開業予定地
開業予定地は、ペルソナや販売促進計画の要となる要素です。
大学や専門学校の近郊か、または郊外の住宅街かによって戦略が全く違ってきます。
駅からの距離や住人分布、年齢層などからお客様になりそうなターゲット層を見極めたうえで、コンセプトを思案しなければなりません。
もしくは、決定しているコンセプトに合わせて予定地を選定するのも1つの方法です。
▼参考コラム
ペルソナ・ターゲット設定
20代の女性客と50代の男性客とでは、カフェに求めているニーズが全く異なります。
どんなに自信のある看板メニューでも、ターゲットとなるペルソナとのマッチングが合わなければ需要はありません。
思い込みで決めつけず、ペルソナと同じ性別・年代・職業の知人に協力を仰ぎ、実際にインタビューしてみましょう。
カフェ店舗のコンセプト
空間自体が「売り」になるのも、カフェならではの魅力でしょう。
アンティーク調の大人っぽい空間にするのか、リピーターを作りやすいドックカフェにするのかによって、経営戦略がガラリと変わってきます。
まずは、同じエリアのカフェとコンセプトが被らないかリサーチしてみましょう。
時間帯ごとの営業内容・テイクアウトなどのサービス形態
モーニング・ランチ・ディナーなど、時間帯ごとのサービス方針を明確にするのも見本となる事業計画書に必ず盛り込まれている項目です。
最近では、テイクアウトやコーヒー豆のネット販売などが大きく売上に貢献しているカフェも増えています。
看板メニューやセットの構成
人気商品となる看板メニューも、カフェの事業計画書に欠かせない要素です。
中には「たった1つの看板メニューによってリピーターが倍増した」、というカフェも少なくありません。
ドリンクなどのサブメニューを加えたセットメニューの構成も決めておきましょう。
広告宣伝計画
新規顧客の獲得やリピーターの確保は簡単ではありません。
チラシやDMの配布、タウン誌への掲載など具体的な広告戦略が必要です。
「ペルソナに合った口コミ発生源」を見つけられるかどうかが勝負。
若い女性であればインスタグラムやピンタレスト、サラリーマンならツイッターやフェイスブックなどが狙い目です。
物件・設備費用の見積もり
この段落では、カフェの事業計画書に不可欠な「費用」について見ていきましょう。
不動産取得費用
家賃はもちろん、敷金・保証金・町内会費にいたるまで内訳ごとに明確な金額を記載するのが基本です。
特に、カフェ店舗では前家賃が発生するケースが多いので、この点を誤算してしまうと予算に大きく影響します。
資金繰りが不安な方は、下記のコラムを参照して下さい。
▼参考コラム
内装・外装・設備費用・備品
これらの費用はネットで参考資料が公開されていますが、店舗の状態やキッチンの広さによって価格は大きく変動します。
最も確実なのは、複数の業者から相見積もりを取り寄せる方法です。
コンセプトや店舗の図面を提示し、よりリアルな金額を算出した方が良いでしょう。
売上目標と会計管理
カフェに限らず、全てのビジネスにおいて必ず事業計画書に記載すべきなのが「売上目標」と「会計管理」についてです。
ここでは、4つの項目に分けて解説します。
仕入れ先一覧と原価表
金融機関で融資を受ける場合、仕入れ先が決まっていないのは大きな不安材料と見なされます。
仕入れが滞らないよう全ての仕入れ先を一覧にし、コーヒー豆・食材・ドリンクの原価表を作成しておきましょう。
レンタルマットや設備のメンテナス業者まで、漏れなく記載しておくのがコツです。
売上高の見通し(月平均)
カフェの売上高は店舗の規模や座席数、立地条件などによって変動します。
ここでは、見本として一般的な算出方式をご紹介しましょう。
▼売上高の算出例
- 計算式:客単価×座席数×回転数×月の稼働日数
- 客単価:ランチセット1,000円
- 座席数:20席
- 回転数:0.7回転
- 月の稼働日数:日曜定休で26日
- 売上高:1,000円×20席×0.7回転×26日=364,000円
▼参考コラム
年間の事業予測(1~3期)
1年を通した売上計画を、あらかじめ3期分は用意しておくことをおすすめします。
FLRコストを70%以下に抑えるのがコツです。
▼会計処理の一例
- FLRコスト=食材費+人件費+家賃
- 営業利益=損益-減価償却
- 経常利益=営業利益-営業外収支
- 当期利益=経常利益-税金+減価償却
年度が替わるごとに売上目標値を設定するのも成功の秘訣です。
具体的な金額だけでなく、「2期目からは営業時間を延長する」「3期目からは定期的にイベントを開催する」といった戦略、加えてブログの開設費用などの設備投資についても計画してみましょう。
会計方法と伝票管理
人件費を削減するなら食券機の導入、客席で精算するならタブレットレジなど、会計方法が選べる時代になっています。
店舗スペースや導線が似ているカフェを観察してみると、最適な答えが見つかるかもしれません。
また、伝票や帳簿の管理を市販の会計ソフトを使って自分で行うのか、それとも会計士や税理士に依頼するのかも決めておきましょう。
開業スケジュール
カフェの開業スケジュールは、遅くとも1年以上前から準備しておくのがセオリーです。
「開業スケジュールを立てている内に自然と事業計画書が完成した」というカフェオーナーも少なくありません。
「どのタイミングで何を決定すべきか」については、下記のコラムにて、時系列で解説しております。
▼参考コラム
まとめ
融資の審査用として作成する場合はフォーマットの指定がありますが、基本的にカフェの事業計画書に決まったルールはありません。
とはいえ、間違いなく言えるのは事業計画書を作成することで、よりビジョンが明確になるという点です。
事業計画書の項目を1つずつ埋めていく作業は、カフェ開業という夢に1歩ずつ確実に進める合理的な方法と言えるでしょう。